本当にブチ撒けちゃやっぱりいけないのですよ。10
2004年6月21日 深い意味はない杉江真耶が愛媛県私立琴海学院中等部3年D組に転入する半年前だ――――
と、そのストーリーは始まっている。
某週刊誌に全文が掲載されもしたので読んだ人も多いだろう。
加害女児の執筆した『バトル・ロワイヤル』の――というよりたぶんその映画化作の外伝的SSである。
橋川はそもそもの「バトロワ」を知らんのでピンと来ないところも多々あったが、とにかく読んでみた。
まず率直な感想としては、「知識はそこそこレベルの子供が、背伸びした文章を書くとこうなるよね」
橋川あたりはそして、やはり同じ年頃の自分が書いていた小説もどきを思い出して「あたたた」となってしまうのだが。
とりあえず、当時の橋川よりも彼女は言葉を知っている。
「―(ダッシュ)」の使い方を覚えたのは橋川は中学に入ってからだったな、とそんなところにも感心してしまう。
そしてやはり「…」は「さんてん」で変換すると出せるよ、と教えてあげたかったな。
あと「?」や「!」の後は一マスあけよう。
「ばばばばば」とか、小説にマンガ的擬音を持ち込む時はもっと慎重に、特別な効果を狙う時以外は控えるべし。
それはともかく。
「小6がこんなものを」ではなく、「なるほど小6だ」という印象。
がんばって小説を書こうとはしてるんだけどね。
しかし、同じ年頃の橋川の書いてたものよりぐっと上出来で、要は経験不足。
そして何より。
橋川はこれがマスコミの言うように彼女の攻撃性や残酷性を反映したものとは感じない。
戦闘シーンは確かにあって、彼女自身を理想化したらしいヒロインはそこで勝利し、生き残る。
だが実際に多くの文字数を割いて描かれているのは、ヒロインの容貌や生い立ちや、心理描写の方だ。
自己を投影しているらしいヒロインをことさら才色兼備の美少女に描こうとしてるあたり、女の子だねぇ、と微苦笑をさそうほどに。
最初に与えられた武器が日本刀だったので、銃器を持ってる級友をだまし討ちしてそれを奪った、なんて描写があるのを見ると、おお、賢い選択だとうなってもしまうが。
日本刀で銃弾を真っ二つにするような話を書いてるプロ作家は恥を知らないといけない。
このSSは以下のように閉じる。
そしてプログラム終了。杉江真耶は愛媛県私立琴海学園中等部3年D組で転校となる―――――。
そこでまた“プログラム”に巻き込まれるのだが。
(原文ママ)
専門用語で何とか言ったと思うけど。
まず時間をさかのぼり、過去のことを語ってから、(作中における)現時点に戻って来る手法。
ミステリだとそこに何か細工を仕込んだりもする、あの例のそれ。
多少とも小説を書いたことがあったら、誰も一度や二度は使ったことのあるテクだと思うけど、何ていったけかなぁ。
小6でこれを身につけていたとしたらたいしたもんだと思ってしまうのだけど、実際どうだろう。
言わせてもらえると、橋川は小5の時に使えました、エヘン。
さておき、これは杉江真耶という、現在愛媛県私立琴海学園中等部に在籍する主人公の、半年前の体験を描いたプロローグ部分な訳だが。
物語はここで終わらずに続きがある――あった…… すくなくとも5月4日の時点で彼女はそれを書く気があった、はずだと思う…… たぶん。
橋川が見てないだけかもしれないが、その点なぜかマスコミは伝えてない気がする。
話の導入部だけ見て
「自分を主人公に級友を犠牲に生き残る小説を書いた、何て残忍な娘だ」
というのは何だか違うんじゃないか、と思う。
この後どういうストーリーを彼女が考えていたかは想像するしかないわけだが。
そして想像は想像でしかない訳だが。
杉江真耶が琴海学園で恋をしたりなんかして、かつて15人をその手にかけた過去を悔恨をもって振り返る展開だって、ありえたかもしれない。
可能性はゼロではないというだけだが。
そして、それを書く前に彼女は自身の手を血にまみれさせてしまったのだったが。
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