あ、天羽志緒(あもう・しお)ってのは、橋川が某所で登場させた名探偵だったりします。
前回の日記の補足。
そういや、橋川日記で名前だしたことなかったっけか。
美少女シリアルキラーを妄想しようと思った時、やっぱり対抗者として名探偵に登場してもらいたいなと思ったので、出馬を願った。

名探偵・天羽志緒vs殺人鬼・切り裂きジェーン

ということでひとつ(何が)。
追いつ追われつ、罠をかけたりかけられたり、追い詰めたと思ったらすんでのところで取り逃がしたり、それやこれやの追跡劇があったものと思いねぇ。

で、いきなりクライマックスいきます。

時に忘れられた廃ビル、窓から舞い込む月光のみを立会人として、ついに天羽志緒と切り裂きジェーンは対峙した。

――いや。
正確には?ついに?というのは正しくない。
なぜなら……

カチ。
完全な無音を切り裂いて、ジェーンの右手でかの忌まわしいカッターナイフの刃が繰り出された。

「それはなしよ」
と天羽志緒はあくまで悠然と、
「知っての通り、私も多少は格闘術の心得がある。もうここに向かってるはずの警官隊の到着までは持ちこたえられるくらいにはね。悪あがきはやめてもらえないかしら――疲れるから」

ジェーンは――
一瞬ぽかんとした表情を見せ、それから、さすがにこらえきれず、小さく噴き出した。
そうした表情は、やはり年齢相応にあどけない。
ただ……

「あ〜あ」
ジェーンはまた、事態を冷静に図れるていどには賢明だった。
カチ、カチ。
カッターナイフをたたみ、天羽探偵と自分とその中間あたりへ、放り出した。
「王手詰み、ってとこ?」

「いやいや、あなたはよくやった方よ。何せ……」
さすがに、天羽志緒の表情がやや険しくなる。
「私が乗り出して7人も死なせてしまったのは、初めてだわ」

「へぇ?」
ジェーンはどこまでも無邪気に、
「それって自慢になる?」

「……そのうち二人は明らかに、避けられた犠牲だった。私がもっとはやく、気付いてさえいたら」

ジェーンはやや並びの不揃いな歯を見せて笑った。
悪戯っ子めいた、どこまでもあどけない笑顔。
ただ、だからこそ、頬に刻まれた隠しようのない生々しい傷痕があまりに痛々しかった。


つづく。

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