第9話「もう一つの新しい命」

ホム化できなければ苦しみながら死んでいく運命の蝶野。
どんな犠牲をはらっても生きたいと思うのは間違いなのかと問いを突きつける彼に、斗貴子さんはひとこと、

「では今死ね」

「死んでしまえ」

と言い放つわけなのだね。

のちの早坂姉弟に対してもそうだったけど、とにかく彼女はホムに関しては容赦しない。
考えてみれば、生きるか死ぬかの瀬戸際に立っていた蝶野に対してもこう言い切った彼女、

「永遠に姉弟ふたりでいちゃいちゃして暮らしたい」

程度の理由だった早坂姉弟に情けなんかかけないよなぁ。

さておき、ホム化を望む「今はまだ人間」に対しても、まるでホム化を願ったそれ自体がすでに罪だとばかり、彼女はばっさり切り棄てる。

この先は橋川の想像はいるけど、彼女のまだ語られない過去、そうまでホムンクルスにかかわるすべてを憎む背景には、自分のよく知る誰かが、ホム化して災厄をもたらしてしまったのを見ていることがあるんじゃないだろうか。
それが本当にやむにやまれぬ理由だったのか、あるいは単に不老不死の誘惑に負けてしまってだったのか。
そこいらは判らない。

ただ、蝶野にしても、早坂姉弟にしても、ホム化を望むその動機はちゃんと聞いたうえで、

「だからどうした!?」

とばかりひとつしかない断をくだす彼女を見ていると、なんとなく前者だったんじゃないかと思える。

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